に損をしたことがしばしばあった。その響には問屋の方でもいつか閉店して影を止めず消え失せている。今や実業熱その極度に達し、地方人の都下に来って商業を試みんとする人日増しに多くあるが、軽率に一地方の産物などを販売せんと、果敢ない望みを抱く時は、意外の危険に遭遇することがあるから、充分慎重な態度を取り、しかる後実行せられんことを希望するのである。
田舎人の多く着手する
商業の種類及びその真理
一、下宿屋
昔は素人下宿屋とて数人の学生を下宿せしめても、僅かの家族の食費ぐらいは儲かった時代もあったが、地代家賃その他すべての物価は年々騰貴して十数年前に比して約二倍するに至った。こうして一般に生活の程度も高くなり、質朴を旨とすべき学生も、電話もあり、電燈、瓦斯設備の完全せるいわゆる高等下宿屋なるものを好むようになって、古びた小規模な下宿屋などは、自然立ち行かなくなった。しかるに地方人は単に下宿料を如何ほどとして幾人おき、それで家賃を払っても差引何ほどの利益があると、きわめて大ザッパな計算を立て、軽々しくこの下宿屋を始める。しかしながら彼ら地方人の人は、田舎にいて自分で作っ
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