に骨を折っている。東京人も一時珍しい内は買って見る。しかしながら一通り人の口に行き渡ってしまえば、味わいが美(都会人の口に)でないので、たちまち東京人に飽かれて、終にはその産物の製造せらるる国の人が僅かに国産のゆえをもって使い物に用いるに止まるのである。その地方の人々が如何に賞翫しても、贅沢な都人士の口には合わないのである。もし幸い幾分都人士の嗜好に適ったものとしても、その国産物だけ売ったばかりでは、とうてい一軒の店を維持することは難しい。店の維持に莫大の費用を要するゆえに、販路のせまい一地方の産物ぐらいを売ったばかりでは、つまりかかり負けするのである。ゆえにある産物を今日なおつづいて売っている店はたいがい東京人の間に売行きの好いほかの品も共に販売して、ようやく命をつなぐという有様である。もしこの産物だけを売るならば、十中八九までは必ず失敗するであろう。当店でも各地の産物を売って見たが、ことごとく永続きはしなかった。初め少しく売行きのよいのに調子づいてどしどし多量に仕入れる時は、必ず後で荷の背負込みとなり、始末がつかない。長月日を経るうちに品が古くなって、売物にはならぬ廃物となり、非常
前へ
次へ
全330ページ中269ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
相馬 愛蔵 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング