意を一軒でも余計に拡張して貰いたいために、競ってその販売店に礼を厚うしたのだ。おかげでボロい収入を得ていた新聞店は実に羽ぶりをきかせていたものである。ところがその販売店の尽力によってその地に各社それぞれ相当の地盤が出来た時分にA社もB社も専売店を作ってしまった。そこで今までの販売店は商売があがったりになった。すなわち永い間新聞社の踏台に使われていた訳である。こういうときにそうした将来のことに気もつかないで現状に安閑としていたら、まことに迂濶なことだと言わねばならぬ。また当時私どもと同じに菓子の小売店をやっていた人の中で、デパートに品物を納めていた連中は、割合にらくをし金まわりもよかったので、自分の店の小売の方など一向に身を入れず、得々として肩で風をきっていたものである。その頃私など粉だらけになって※[#「飮のへん+稻のつくり」、第4水準2−92−68]コをこねたりしてみじめなものであった。ところが、その連中の間に猛烈な競争が始まってメチャメチャに値段を崩しはじめた。おかげで利益を得たものはデパートばかりで、品物を納める側はサッパリ儲らない。そこで頭のよい人は従来と同じ材料を使って、全然
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