家族は美食しているが、小僧雇人は特別の粗食である。休息日に家族の者を遊びに出して、雇人小僧に留守番をさせている。これが小僧の不平の根元である。また一定の休息時間を与えない。ある仕事を仕上ぐればその先に休みが出来るとの望みを与えない。従ってその仕事に隙が入る。主人の目先きを偸んでは怠ける。良店員良小僧とその家の商売とは関係が最も密接である。しかるに田舎では雇人は朝から晩まで息もつかせずに働かしむる習慣があるから、新たに東京に出て来た商人も、その雇人を使ったように使おうとする傾きが著しい。これがその店の繁昌せぬ一原因となるのである。
新たに商店を開く注意
地方人の失敗する理由は、概略前章において述べた通りであるが、いよいよ新たに店を選択せんとするには、さて如何なる場所を如何にして得べきかを詳細に説く必要が起る。それゆえ多少重複の恐れはあるが、左に別項を設けることにした。
一、場所の選択
我ら素人はとかく事業に関して臆病にすぎるもので、商店の選択なども、思い切って好場所を探さんとはせず、いつも見込のない場末を選ぶくせがある。これは資本の裕かでない、しかも無経験の田
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