商売の性質とを考え合わさなくてはならぬ。普通の人がこの関係については充分の注意を払わないで、単に通行の多い賑った町で、しかもなるべく家賃の安い家というような考えをもって貸家を探している。またたとえ多少は場所の選定について研究する者はあっても、地方の考えが頭脳を去らないがために、その見当を誤まることが多い。商売が繁昌するか、失敗に終るかということは、全く場所次第である。ゆえにもし不適当なる場所に資本をおろしたならば、もはや取り返しはつかないのである。
場所の選定について注意すべきだいたいの所をいえば、近来電車が開通して交通の便のよくなった結果、東京の商業の中心が一部に固まって来た。今まで十五区に各中心があって、いずれも繁昌していたのが、今や本当の中心は日本橋京橋へ集中して、各区の中心地は小中心の有様となって来た。この中心というものは、豪商富家が多数集合して、多年の信用を保っている所であるから、最も顧客を絶えず惹きつけている。ゆえに大いに為さんとするならばこの中心地に踏み込んで開店するのが最も得策であるが、しかし新出の者が十分の声価をあげて相当顧客を引きつけるまでには、少なくとも隣家に見
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