報酬に由って自ら生活して行くだけの順序方法を書いたものに過ぎない。吾人は損することを誇りとするものではないが、金を貯えることをもって唯一の理想とすべきものとは信じない。たとい多大の財産を有する者でも、一つの為す事なく、うかうかとこの世を渡るべきものでないことを主張するに過ぎないのである。

  田舎人が東京へ来て失敗する理由

    一、普通の商家の内幕を知らず

 第一に田舎出の人々は、東京普通の内幕が十分に判らないのである。東京の普通の商家では、単に商業上の収入のみで一家の家計を立つることの出来ているものは、十中一二に過ぎない。他の八九は各々副収入によってその不足を補っている。すなわちあるいはその妻が商売の方を担任し、亭主は他に出勤してその月給によってこれを補っているとか、あるいは土地家屋を有してその収入で家計の一部を助くるとか、あるいは金貸しをするとか、ある者は周旋屋で、その手間手数料で家計を補うとか、ことに最も多いのは手内職である。例えば靴屋、指物屋、仕立屋等の多くは、その仕事を職工兼工店という方法で家計を立てている。というのは自分で仕上げたものを、内で売り、問屋にも出すとい
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