に対抗出来兼ねるのであります。
 総じて何事によらず八分目なるがよろしく、この心掛けさえあれば繁昌疑いありません。

    店員の教育方法

 私が餅菓子を始めた当時、某有力菓子店の主人から、職人の給料は薄給なこと、そして問屋から歩合やコンミッションを取る悪弊があること、店の商品や原料を持ち帰ることは公然の秘であることを聞かされ、私は断然この弊風を根絶しようと決心した。
 そこで私は月給を従来の二倍かにして、その生活安定を計る一方、店の規律をきわめて厳重にした。しかし長い間の習慣というものは恐しいもので、なかなか改まらなかった。ようやくこれは根絶し得た。
 そこで、店員待遇法はどうしているかというと、妻帯者には三割、子供一人増すごとに一割、両親あるものには二割を増している。またこれは給料ではないが、店員の食事にずいぶん注意している。食事というものは些細なことのように考えられやすいが、非常に大切なことだ、並以上のものを食べているという自覚は、大変その人格に影響を与えるものである。
 無論私は店員と心の接触をするように心がけている。例えば四季折々の年中行事を必ず行なって家庭的な暖か味を添
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