り切るように製造致します。たまたま臨時の注文等に接すると、正午頃売り切る事もあります。かかる際は御客様に申し訳ないと思いますが、これくらいに内輪にしても烈しい夕立の日等は往々にして数十円の残り品の出来る事があります。しかしこれは一年中に二、三回に過ぎませんので、この機会に日頃お世話になる銀行や、郵便局、育児園等に贈呈して決して明朝に持越さないのであります。
 これが私の店の繁昌の最大原因と信じております。
 この際に喫茶部を経営される方に一言呈したいことは、やはりこれと同種の理由にて計画は平日を標準として、少しく内輪にすることであります。近くに野球場があるとか、祝祭日とかにて平日に倍する客のある事を目当てに手広く設計する事は絶対にしてはいけません。午餐時か夕食頃のごとく来客の混み合う時には少しく手狭を感じて一部の客を御断りするくらいが最も適当の設備というものであります。
 古来より大料理店等が近来の小さいレストランに押され勝ちな事はこの理由であります。大料理店は婚礼や大宴会には好都合でありますが、平常は大屋台を冠って多数の雇人を遊ばしておくのが多いので、毎日経済の平均のとれるレストラン
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