は当然の成り行きでありますが、なおそのほかに繁昌に大切なる一つのコツがあります。
そのコツたるやきわめて簡単なるものなれども、それを知ってもこれを行う者が少ないのでせっかく良品を廉く売りつつも繁昌の妙域に達する者が案外少ないのであります。
それは何であるかと申しますと、商品はすべて内輪に製造するということであります。たとえば百円の売れ行きはあると思っても、雨天その他第一の故障に備えてその八掛け、即ち八十円の製造に止めることであります。そうして如何なる場合においても売れ残り品を作らないことであります。
商売を内輪にし毎日早く売り切れとなれば、客はこの店の品は常に新しいとしてますます愛好されるものであります。
然るに遅く見える客を空しく帰すは如何にも惜しいと考えて少しでも余分に作るのが人情の常であります。もしこの余分が幸いに売り切れれば結構でありますが、三日に一度ぐらいは売れ残りとなります。
これを売れ残り品は捨てるに忍びず、明朝蒸し返しては造り直して客に勧める。これを求めし客の信用は当然に失落するのであります。
私の店ではその日に売る生菓子は常に午後三時のお八ツまでを限りに売
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