う急に認められるものではないし、相当永い間の辛抱を要する。だからたいがいの人が辛抱しきれなくなって最初の方針を破ってしまうのだが、そこで方針をかえるということは、結局今までの犠牲が虻蜂とらずに終るばかりでなく、かえって信用をおとす結果となる。だからよいと信じて着手したことはトコトンまでやって見なければいけない。いったい多くの人は成功をあせりすぎるようだが、一足飛びに成功しようとしたってそううまく行くものではない。」
「経営上の苦心談をきかして頂きたい」
「他よりも良い品を作るには、他よりも腕のすぐれた職人を入れなくてはならない。和菓子では風月堂に九年も職長をした菓子界でも相当知られていた男を職長に迎えて思う存分に腕を振わせた。材料の仕入などは私の所がどこよりもやかましいと仕入先からいわれたくらいだ。だから私の店でこしらえたものは他のどこのよりよいと信じている。ところが、ある時、ニューヨークで偶然にもうちの羊羹と虎屋の羊羹とが一所で味を比較されたことがあって、その批評によると、うちの方がよくないという情報が私の耳に入った。そこで私は早速職長を呼んで訳を話した。ところが職長はどうしてもそん
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