喧嘩をしないということは、お辞儀をしないことの帳消しにならんかね。」
「なるほど、そうですね。」
 と言ったことがある。仕事を一生懸命やっていてくれるので、お辞儀をしてくれなくても、少しも苦にはならない。

    商店経営についての一問一答

 ある人が来て中村屋の経営苦心談を聴かせてくれというので、一問一答をした。
「中村屋が今日になるまでは数十年という永い歳月をすごしたが、この間よくまたお店の主義をかえられずに来ましたね」
「どこよりも一番よいものをということが開業した時からの信条で、これを頑張り通されぬようだったら商売はしないという堅い決心でやって来ました。これが私の道楽でもあり、儲ける、儲けぬということよりも、なんでも日本一よいものを作って売るということで一生懸命だった。それが誇りでもあった。」
「然し品がよければ高く売らなければ引合わないし、高ければ売行きは悪い。そうすると、経営上の点で最初の理想通りに頑張り通すことは出来なくなって来る。ついに迷い出す。方針をかえたくないという、危い瀬戸際を何度も往復されましたでしょう」
「それは少し苦痛もあった。いくらよい品を作っても、そ
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