店員を育てて、それに気持よく働いてもらうということを考えている。もうそれで、商売は八分通り出来たものと思ってもよい。人間の悪いものを側から鞭打つ遣り方もありましょうが、それは、三人や五人のうちは出来るが、何百人となると駄目である。そういう遣り方の時は、主人が病気をしたり、留守をしたりする時は、まるで敵を飼っているようなもので、隙を見ては悪いことが起る。で、私は心持よく働いてもらうように絶えず心掛けている。
この間も、群馬県の製糸所の所長さんが見えて、いろいろ話をしたが、その人の前任者までは、朝の七時から晩の五時まで十二時間作業であって、しかも時計の針を二十分、三十分おくらして、それだけ余計の仕事をさせた。今どき、第一、時計ぐらいは誰だって持って居る、朝はキッチリ合ったのに、夕方になると、自分の時計ばかり二十分進んだというような馬鹿なことをした。結局、一種の詐欺である。
ところが、その人が社長になってからは断然そんなことはやめさして時間通りにした、その代り、あと僅かで仕事が片付くというような時には、十分でも二十分でも了解を得て奮発してもらったら、かえって成績があがるようになったと喜ん
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