の場合に当てはめて見ると、明らかに彼らの気持を退嬰的にすることは事実である。店員はこの恩給を棒にふるのもなんだからと、恩給を逃さぬようにとばかり考えて、独立の機会を逸する事となりがちでありまた店主の方にすれば、あたら一個の男子を飼殺しにする結果になる。これは、前にも述べたように常に機会ある毎に独立するような心持で居て、貯金もせよ、遠慮なく店を退けという、恬淡たる態度でいるに如かずである。若い者にはそれ相当の夢もあり希望もあるのであるから、それを助長し、努力させて行った方が幸福ではなかろうか。
 その代り、どんな優秀な、店にとっては貴重な店員にあっても、退店を申し出た場合にあってはあえて引止策は講じないことにしている。これは本人のためであると同時に店にとっても必要である。これを引止めたり延期を求めたりすれば、それは店員に慢心を起こさせて彼等を増長させるおそれがあるからである。

    人格的人物の養成

 昔は店の小僧と云えば一人前の人間でないとされて居た。主人がいなければ怠け出し、つまみ食いする。油断すれば銭箱をごまかす、とかく横着な代物のように考えられていたのは事実である。現代とも
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