じています。
御用聞きに出さぬ
今日の小売商店で何商売にかかわらず、いわゆる御用聞きを出していないところはほとんどない。そうしてこの御用聞き戦がはげしくなればなるほど、小売商店自身が売上げに対する営業費の負担増加に苦しみつつあるのですが、私の店ではこれを全廃しています。その動機としてもちろん経営の合理化による営業費節減の目的もあるにはありますが、それよりもなお多分に、店員諸君の人格を尊重する所から発しております。今日の御用聞きの実状を見ますと、本当の意味での注文取りはほとんどなく、まるでお得意の台所への御機嫌奉仕です。主婦や女中に対してどうも卑屈な態度をとらざるを得ない有様です。台所口へ顔を出したついでに水を一杯汲まされる。ちょっとその辺の掃除を頼まれる。子供とか女中とかへはつまらないお土産が要る。これでは御用ききそれ自身の能率もさることながら、せっかく店内で尊重し合っているものが、一歩お得意まわりに出ると踏みくだかれてしまうのです。だがまあ商売とはそうしたものだとたいがいあきらめて、御用聞きも馴れっこになって要領よくやって行くのが世間並みでしょうが、それだと一個のパン、
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