部を開いた。百貨店などには四季絶え間なく人が出入りしている。というのは、四季それぞれ買わるる品があるからである。
 一週間の短い間を見ても、商いには繁閑のあるものである。私の店は土曜、日曜、祭日は贈答品や遠足のため特に忙しい。ところがその日曜、祭日に、学校、会社、官庁から、催しがあるから出張して店を出せと言って来る。私の店の品を信用しての注文であるから有難いことには違いないが、私は辞退することにしている。日曜や祭日はそうでなくてさえ忙しく、店だけで手一杯である。もし注文を引受ければ、臨時に人を雇わねばならず、手落ちもありがちになり、結局一時の利益のために、店の信用を損い、双方とも不利益を受けることになる。
 先頃私の関係深い早稲田大学の五十年記念式の際に、品物を割引して入れよという話があった。この時先方は三割くらい引いてもよかろう、他の店でもそのくらいは引くのだからとの話だったが、結局特別の関係から一割だけ引いて、それも店の者は手伝いにやらず品物だけ納めることにした。その時三割引いたという餅屋の品を調べて見たところ、いつもの品より三割方だけ軽い。先方も安いからこそ繁昌している店、そう普
前へ 次へ
全330ページ中153ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
相馬 愛蔵 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング