なく、この問題は解決したのであります。
これと同様の話が三井家にもあったと聞いて居ります。江戸時代越後屋(三越の前身)の大番頭の俸給は、僅か三両でありましたが、問屋からのツケ届けによってその生活は大名暮しだったそうであります。この風習は明治時代になっても依然として残って居りましたが、三井家中興の大功労者、中上川彦次郎氏は、まず第一にここに着眼し、三井家全体の使用人の俸給を一躍数倍に増額し、同時に彼らの賄賂を厳禁して今日の大三井の基礎を築いたということであります。今日でも一般社会にはなおこの悪習慣が行われて居りますが、その責はむしろ雇主側に多いと云わねばなりますまい、すなわち主人は、雇人の生活の必需俸給を惜しんで、かえってこれに幾倍する損害を受けて居るのであります。これは無駄の大なるものであります。
またこのほかに商売や事業に極めて熱心な主人の往々にして陥り易い大きな無駄があります。職業に熱心な主人にとっては、その仕事はむしろ楽しみで、従って倦むことを知らない。夜は十時、十一時と時の経つのも忘れて居りますが、翻ってその下に働く人の身の上を思い合せて御覧なさい。実に惨めなものであります
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