の感化をうけて、物を大切にするように改まってまいりました。
無駄の最大なるもの
私が前申し述べましたことは、無駄の中のむしろ小なるものであります。私が三十年前、日本菓子の製造を始めた当時は菓子職人に悪い習慣があって、卵や砂糖を持ち運んだり賄賂をとったり致したものであります。私はこれを発見しましたのでそれをただちに解雇して他の者を雇ってみましたが、やはりこれも同様でありました。私はこの浅ましい習慣が、小店員に感染してはその父兄に対して相済まぬと考えましたから、当時第一流の菓子店主達に相談してみますと、菓子職人は皆同様であるから、その不当収入を毎日一円と見積れば、実収入月に五十円、彼らとしては相当なものだという話で、まるで店主側でも彼らの悪習慣を公認している様子であります。これでは可哀想にも正直な職人は何年経っても妻子を持つことすら出来ないのであります。私としては、こんな矛盾は一日も黙認することは出来ませんから、ただちに職人の俸給を一躍二、三倍に増額しその代りにこの悪習慣を改めざる者は即時解雇する旨厳命致しました。幸いにその後においては、二、三の不心得者以外はこの禁を犯すもの
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