な考えは全く地を払った様であります。
また西洋人は経済思想が発達して居りまして、よくものを大切にしこれを利用することを研究します。日本料理などでは、良い部分だけを用いて他は棄ててしまいますが、西洋では骨も筋も少しも捨てず脳味噌までも利用致します。日本古来の戒めは物に対する感謝からであり、西洋のは経済思想の発達からでありますが、現代の日本人にとっては、ともに採って以て範とすべき美点と考えます。私の店で数年前雇入れたロシヤ人のチョコレート技師は、この点実に見上げたものでありまして、ほとんど紙一枚、釘一本といえども粗末にしない。例えば、チョコレートやクリームを紙に巻きしぼり出して菓子に飾りを描いたその紙を日本の職人はそのままポンと投げ捨ててしまいますが、このロシヤ人は、その紙を粉の上にチャンと伸ばして、さらにその上に粉をふりかけ紙に付着した材料をば綺麗に拭い取って、初めてその紙を捨てるのであります。一事が万事で、彼の工場には塵一つ落ちて居らないのであります。彼の俸給は四千円でありますので、最初は少し高過ぎたかと考えましたが、彼の働くチョコレート工場はもちろんのこと、他の六つの工場までが皆彼
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