能率より無駄を省け

 スピード時代だからとて、能率万能の如くに申さるる向きもありますが、私は今日の如く機械力が進めば、だいたいこの方面の問題は解決する。従って能率についてはさほど心配の必要はないが、スピード時代の弊害として、とかく物を粗末にする傾向が甚だしくなってまいりましたから、我々はこの点に対する注意を怠ってはならないと思います。否むしろかかる時代において、さらに一段と注意を払って、物を大切にして、微細な物といえども決して粗末な扱いをしないようにすることが、より必要なことであります。
 菓子職人においてこれを観ますと、材料の扱い方が実に粗末で、パン職人の如きはちょっとした焼き損いや不出来なものは、自らの失敗をおおわんがために燃してしまうのであります。料理人は主人のものという頭が働いているからでありましょうが、これは誠に悪い傾向であります。私はこのような悪傾向は何とかして一掃したいと考え、絶えず注意を怠らずに居たのであります。昔は我が国でも物を大切にするよい習慣がありまして、米一粒でも粗末にすると仏罰が当るといってやかましく戒めて居たのでありますが、近頃ではかような立派
前へ 次へ
全330ページ中123ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
相馬 愛蔵 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング