。店則には帰宅時間の定めがありましても、主人の執務中、自分だけ帰宅することは出来ず、満々たる不平を懐きつつ主人の退くのを今か今かと待って居るのであります。されば、これらの人々の執務時間は、十四五時間に及ぶとも、その能率に至っては早仕舞を楽しみつつ喜び勇んで働く人々の八時間にも劣るものであります。こうして仕事好きの主人は、毎日毎日使用人の数時間を無駄にし、彼らの家庭の団欒をも失わしめるのであります。また使用人中には何らの不平もなく、十五、六時間を真剣に働く殊勝なものもありますが彼らは過労の結果、業半ばにして倒れるものが多いのであります。これは大切な人間の生命を無駄に終らせるのでありますから、これこそ最大の無駄といわねばならないのであります。
かつて欧州大戦当時、神戸の独逸人商館に勤めていた友人の話に、その主人は毎夜十一時迄も仕事をして居りましたが、使用人にはことごとく五時半限りとして帰宅させました。ある時友人が主人に少しく手伝わせて貰いたいと申し出ますと、彼はこれに答えて、祖国独逸の人々が、今戦場に生命を曝しているのを思って私は働いているのであるが、諸君はすでに定められた今日の職務を果
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