てい所期の目的を達することは出来ません。店の創業時代、夫婦だけ働いて居る頃には模範的の商店として、評判の良かったものが、大勢の人を使うようになってから、急に人気を失った店が少なくありませんが、皆この点において欠くる所があったからであります。
 店の不統制、乱脈の責任は実に主人にあるのでありますから、主人なる者は常に虚心坦懐、人にはあくまで公平にして私なく、かつ懇切なるを絶対条件と致します。

    俸給

 第二は俸給の問題であります。沢山の俸給を与え、僅かしか働かないならば誰でも喜ぶものでありますが、そういうことをしては、良品を廉く売る事は出来ません。勢い他店との競争に負けることになります。俸給はだいたい世間並みに標準の下にあって、しかも一般以上の成績を挙げることを考究せねばなりません。
 私は今より四十余年前、早稲田の学校で少しばかり経済学を学びました。その時の講師で後に東京高等商業学校の校長になられた松崎蔵之介先生のお話に「当時独逸は英国に較べて非常に貧乏で、官吏の俸給の如きも、英国の三分の一位より与える事が出来なかった。しかし妻帯するとか、子供が生れた時にはそれに対して相当の
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