た。
しかも彼は巧みに英国の魔手を逃れ、大正四年六月日本に亡命した。英国政府も彼が日本に入ったことを察知し、内々探査を進めていたが、その年十一月、在日本の英国官憲はついにボースを発見、日本政府に迫って彼を国外に追放せしめようとした。しかしこういう政治犯は各国ともにこれを保護する習慣であるし、現に英国自身国際的先覚者をもって任じ、その本国では各国の亡命客をどこの国よりも多く保護しているくらいであるから、ボースを印度革命の志士だと言ったのでは、日本に対し目的を達することができない。そこで苦肉の策を案じ、ちょうど欧州大戦中であったから、ボースを世界の敵なる独逸《ドイツ》の秘密探偵として日本に潜入したものであるとなし、彼が日本から追われて領外に出るのを待って殺そうという計画を立てた。大英帝国ともあるものがじつに卑怯千万な話であったが、当時我が政府の外交に当る人々は、欧州列強に対し甚だ弱気で全く受身であったから、こんな侮蔑的要求をも拒否することが出来ず、ボース及び同志グプタの両志士に対し、一週間以内に国外へ退去することを命じた。
このことが聞えると、言論機関は一斉に立って我が軟弱外交を攻撃し
前へ
次へ
全236ページ中100ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
相馬 愛蔵 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング