浅野さんよく言ってくれました、こういうことを行《や》らせた私たちこそ済まないのです』と言って後は言葉が出ず、三人は心の清々しさと嬉しさで胸がいっぱいになり、ともに涙に咽びました。浅野さんのこの時の清らかな懺悔は永久に天国の記録に残るでしょう。
 その後こういう美しいものにめぐり合わないのは何となく淋しく感じます。店員の数が増加するに従い、昔のような家族的なあたたかみの内に団欒する機会が失われ、予期しなかった冷たい規則を用いて警戒しなければならないようになったことは、ほんとうに困ったことであります。

    おまきさん

 大正四、五年頃中村屋に務めていたおまきさんは、なかなかのしっかり者でした。
 印度革命首領ラス・ビハリ・ボース氏に退去命令が下って、一時中村屋の一室に憂愁の幾月かを送らねばならなかったことは、主人や私の書いたものであなた方も知っているでしょう。当時おまきさんもこの事件につき、重大な任務を引き受けることを誓いました。普通の女ならば怖がって逃げ出すところを、おまきさんは大胆に沈着に自分の役割を果たしました。風俗習慣が違い、言葉の通じない外国人のボース氏を世話するのは容易
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