名の警官が隊をなして私の家を襲い、この一盲人を引致し去った。その際警官隊の行動は狼藉を極め、争って屋内に闖入《ちんにゅう》し、私や妻の室まで土足で踏み荒し、言語道断の暴れようをして行った。
 私は警察の不法に驚き、忠良なる日本臣民としてこれを許しておけることでないと思った。私は滅多に怒らないが、この時は真に公憤を発したのである。
 翌早朝淀橋署の刑事主任が来て、前夜の無礼を陳謝し、署長も恐縮して、後刻お詑びに来るからという。私は署長が真に反省してあやまりに来るのならば、将来をよく戒めて公の手段を取ることは見合わせようと考えた。しかし署長はとうとう顔を出さず、この事件の始末に対し全く誠意のないことが知れた。
 そこで私は、警察官が乱入した際に落して行った眼鏡や手帳などを証拠品として、淀橋署長を相手に家宅侵入の告発をした。弁護士や友人たちは、警察を相手取っての訴訟は将来営業上に何かと祟られて煩《うる》さかろうから、思い止ってはどうかと忠告してくれたが、私はそういう意味で泣き寝入りする者が多く、ためにいっそう官憲の横暴が高まるのであると考えたので、多少の犠牲は覚悟の上で断然出訴したのであった
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