野路の菊
清水紫琴
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)欹《そばだ》てぬもなし
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)藤助|爺《おやじ》は
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)片※[#「日+向」、第3水準1−85−25]《かたとき》
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その一
名にしあふ難波の街の金満家、軒を並ぶる今橋筋にもこは一際眼に立ちて、磨き立てたる格子造り美々しき一搆へ、音に名高き鴻の池とは、このお家の事であらうかと、道行く田舎人の眼を欹《そばだ》てぬもなしとかや。標札に金満家てふ銘こそ打つてなけれ、今様風にその肩書を並べなば、何々会社社長何銀行頭取何会社取締役と、三四行には書き切れまじき流行紳商、名さへも金に縁ある淵瀬金三とて、頭の薬鑵と共に、知らぬ人なき五十男、年を問うより世を問へとは、実にこの人の上をいへるにやあらむ。山高帽子いかめしく、黒七子の羽織着流して、ゆつたりと蝋塗の車に乗りたる姿は誰が眼にも、帽子を脱げばかみな[#「かみな」に傍点]月冬
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