当世二人娘
清水紫琴
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)知己《ちかづき》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「てへん+勾」、第3水準1−84−72]《かか》らひて
−−
その一
女学校これはこれはの顔ばかりと、人の悪口にいひつるは十幾年の昔にて、今は貴妃小町の色あるも、納言式部の才なくてはと、色あるも色なきも学びの庭へ通ふなる、実に有難の御世なれや、心利きたる殿原は女学校の門に斥候を放ちて、偵察怠りなきもあり、己れ自ら名のり出て、遠からむものは音にも聞け、近くは寄りて眼にも見よと、さすがにいひは放たねど、学識の高きを金縁の眼鏡にも示し、流行に後れぬ心意気を、洋服の仕立襟飾りの色にも見せて、我と思はむ姫あらばと、心に喚はりたまふもありとかや。これはいづれの女学校にやあらむ、いはぬはいふに増す鏡、くもらぬ影も小石川音には立てぬひそめきも、三人寄れば姦しき女の習ひ、いつしかに佳境に入りし話し声、思はず窓の外に漏れて往来の人も耳引立つめり。
次へ
全37ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
清水 紫琴 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング