らつしやる上、二三年前外国へ御修業にお出になつて、私共には分りませんが、何だか片仮名で有難さうな、お肩書が付いてゐるんでございますから、ただ今は御自分様で、お小遣金は御充分に、お取りになつてをりまするところへ、親御様から表向きの、お手当はあらうと申す訳でございますから、失礼ながらお二人や、お三人口位は、楽々とお過ぎになる位の事は、充分に出まする見込でげす。どうせあなたそれでなくちやあ、埋まらない話でございますからヘヘヘヘいやまたどうにもその辺は私が』
と存外|談話《はなし》のてうし[#「てうし」に傍点]もよく、運ぶ肴の前に並べば。
『そりやあいい話だね。まあ一ツお飲《あが》り。私もおあひ[#「あひ」に傍点]をしやうから』
と、一口飲みて中井へさし、それよりは二人にて、さしつ抑えつ飲みながらの密議、互ひにしばしばうなづき合ひ。
『じやあその返事次第、歌舞伎座へ是娘《これ》を連れて、ゆくとしやう。お前の方でも手ぬかりなく』
『それは万々承知の、助六は堀越が一世一代、その狂言の当りよりも、こちの揚巻さまが大当り、やんやといはせて見せまする』
『ホホホホ、お前の承知も久しいもんだ。いつかの写真
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