。御当人様ではまるで奥様を、お探しになるやうな思召、婢《てかけ》妾《めかけ》といふやうなものでは、とてもそれだけの用に立たない。その当人の器量次第では、妾と思はぬ、奥として待遇《あしら》ふほどに、そこを万々承知して一ツよい奴、いゑ何よいお嬢様上りのものを、周旋してくれまいかとの、仰せを蒙りましたので。なるほどこれはごもつともと、私も首をひねりまして、是非どふかお世話をと、存じますのではございますが、さてさうなりますとむづかしいもので、私もまるで御|媒介《なかうど》の、大役を仰せ付かつたやうなもの。お妾様ではないないの、奥様と申すがむづかしいところどうもちよつとござりませぬので。ヘヘヘヘいゑ決してこちら様の、お嬢様をと申す訳ではござりませぬ。お懇意なお先にでも、ひよつとそんな方が、いらつしやいますまいかと存じまして。ヘヘヘヘいやどうもむづかしい探し物で』
としきりに妾といふを気にする様子を、年増は別に心に留めず。
『いいじやあないか、お妾だつて。それならまるで奥様同様だわね。それで何かえ、お手当はどういふんだえ』
『へいそれはもう、どうでもお話がつきませうでございます。華族様の若殿様でい
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