つかり番頭さんに口を辷らすまいぞ。極内でわしに聞かしとくれ。おほかた旦那はこういうてはつたやろ。店の者の中でも、この三太郎は一番色白でええ男やさかい、あれにはキツト気をつけいとナそれ。
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アハ……と笑い転げる長吉をまた一人が捉へて、
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なんのそんな事があろぞい。三太郎はあんな男やさかい気遣ひはない、向ふが惚れてもお糸が惚れぬ。それよりはこの惣七。あれがどうも案じられると、いははつたやろ。
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いふ尾についてまた一人が、
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三太郎ツどんも惣七どんも、その御面相で自惚《うぬぼ》れるさかい困るわい。お糸さんの相手になりそなのは、わしの外にはない筈じやがな、ナ、ナ、これ長吉ツどんナ旦那の眼鏡もそうやろがな。
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銘々少し思ふふしありと見えて、冗談半分真顔半分で問ひかかるをかしさを、長吉は堪《こら》へて、
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へいへいただ今申します、旦那のいははりましたのには、店の奴等は三太郎といひ、惣七十蔵、その他のものに至るまで……
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といひ
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