おつかアを呼んで来てくれろツて、頼んだか知れやアしないんだ。
さうだらうともさうだらうとも
するとちやんが怒つたアな、あんなおつかアがそんなに恋しきやア、おつかアの所へうせろツて。おらアおつかアの処へ行かれる位なら、始めツからちやんを頼みやアしないや。それからおらア……
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といよいよ泣声になり、
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おつかアに逢ひたくツても、ちやんが怖いから何もいやアしないんだ。おつかアの事をいふと直ぐ叱るから。
オヤマア可愛さうに、さうかい。
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と老女は復命代はり奥様の方を振向きぬ。奥様は傍らの松の幹にもたれて、余念なく聞き入れたまふを、老女の瞳につれてこなた向きし子は、不意に奥様を認めて、その神々しきまでと蒼白く美しく、高尚《けだか》きに気を打たれ、円き眼を瞠《みは》りて見詰めゐたりしが、再び老女に、
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それからどうおしだえ。
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と問はれて我にかへりたれど、なほも奥様の方を気にして、我知らず着ものの前など掻き合はせながら、
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だけれどちやんが正月から煩
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