おれが何十年の苦労を無にする半※[#「日+向」、第3水準1−85−25]と、心注かぬ馬鹿者めが。あれ程いふたにこのおれの心が分らぬ大馬鹿もの、もうその馬鹿ものに用はない。どうなと勝手にしおれいと。枕を取つて投げ棄てる、力は抜けても、中に立つ柱の際に嘉平は喫驚《びつくり》。ひやあ太一さうまでも怒らぬものじや。病気の毒じや勘忍せい。悪いはおれじや、ま、待てやい。お娘はおれがいひ聞かす、いひ聞かすから、聞け太一、待つてくれこれお娘と。間違ひだらけ一息吐き。さてもさてもむづかしい、義理も理屈もあつたもの。余計な事をして退けた、おれが失策。聞く程にの、見る程にの、どう謝罪らうやうもない。悪いはおれじやが、謝罪つて済まぬこの場じや、なお清坊、聞き分けて立つてくれ。頼む拝むこれお清坊。お前が此家《ここ》に居る内はの、太一は怒る、お前が泣く。どちらももつとももつともと聞いてはおれが堪まらぬじや。おれがせつぱを助けると、思ふてちやつと出立《たつ》てくれ。その代はりにはこのおれが、どこまでも、太一の身躰は引受けて、お前の代はりに介抱する。な太一そじやないか、お娘が孝行しやうといふに、お前が怒る法はない。共
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