さへ、またしても小言の八百。よしんば去ねといはれたところで、帰る里には父母《おや》もあり。兄はかなりな商法家、奉公人の三四人は、召使ふてもゐますれば、不自由は、良人の方にこそ。里へ帰れば母親が、甘いといふではござんせぬが。出戻りとても家のもの、他家《よそ》から這入つた嫂なぞにひけ[#「ひけ」に傍点]とらす気遣ひは、さらさらもつてござんせぬ。それでもこれが女子の役目と、辛抱すれば、よい気になり。あなたの前ではござんすが、大事にしたは、その当座、ほんの二月ばかりの事。やれ気が利かぬ、おかめ[#「かめ」に傍点]じやと、初手から知れた私の鼻が、急に低いか何ぞのやうに、高い声での悪口も、頭脳《あたま》の上を超せばこそ。すめばすむ、家請けまでも兄の判、母がくれます小遣金《こづかひ》が、帯側にもなる事か。帯は帯でも、世帯の方へ、廻したは、三上山を七巻、はんぱものでもそれ位の金高にはなりまする。それを恩にも着る事か、よその乙姫探してばかり。ほほほ戯談《じようだん》ではござんせぬ。真実女子に生まれたほど、割の合はぬが定ならば、あきらめやうもござんすが。今尾様の奥様の御噂聞きては、なぜかうも、同じ女子の運
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