まする。ははは乃公《おれ》か、乃公はそんな脆弱《ひよわ》い身体でない。いはばこれも道楽の、好きでする仕事に、疲れなんぞ出るものなら、とうに死んでゐる筈なり。まだまだ前途悠遠の、序開きといふ段で、がつくりとなる程なら、最初から政治なんぞに、嘴《くちばし》は出せないさ。やうやく政党内閣といつたところで幼稚なもの、まだ二回目の最初一度は竜頭蛇尾、藩閥に回収された跡引受け。誰も初役の、勝手は分らず、議論は多し。まだなかなか国利民福を増進するの機関として、遺憾なき活動を見るまでに至らぬは、知れ切つた事なれど。一旦挫折の運命に陥つた、政党内閣の信用を、回復するが刻下の急と、気の進まぬ舞台へ上がつても見たなれど。そなたは乃公が進退の軽々しきを遺憾とし、鬱ぎ出したといふ訳かなと。意外の辺より疑問を下すも。妻の心を一転せしめて、たちまちに憂鬱の原因を、看破らむものと思へるなり。清子は夫の心は知らねど、力《つと》めての語調はいつもの爽やかに。ほほほまおむつかしい、飛んだ事でござりまする。そんな事が分りまする私なら、あなた様の御苦労を、少しは分けて戴きましふに。政党内閣がどんなものやら、分らぬこの身の気楽さ
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