で、お装飾《つくり》を、大義とばかり仰しやるは、よくよく御苦労ありやこそと、お心汲んでをりますれど。さうばかりでは、なほの事、お気が塞いでいけませぬ。少しなりとも、御気分の引立つよう、無理にもお身体借りまして、お装飾申して見ましたい』と。なにかにつけて、世話好きな、老人気質、あれこれと、進まぬお園を勧め立て、装飾り上げたる、髪容《かみかたち》『嬉しやこれでお美しい、玉の光が見えました。娘があらば、ああかうと、物珍しい心から、余計な世話まで焼きたがる、うるさい婆とお怒りなく。私が申しまする事も、一ツ聞いて下されますか』と。持ち運んだる紙包み、二ツか、三ツか、三ツ襲《かさ》ね『これこのお召のお襲ねは、ちよつとしたお着替えに、この銘仙が御|平常《ふだん》着。お帯も上下、二通り、お長繻絆や、なにやかと、さしづめ遁れぬ御用のものは、揃えてあげまするやうと。あの翌日《あくるひ》深井様御越しの節のおつしやり付け。それではお柄を伺ひましてと。申し上げてはみましたなれど。お耳へ入れては、要る、要らぬと、御遠慮がめんどうな、それよりは、万事よきに計らふて、お着せ申してくれとのお詞。それ故の押付けわざ。御寸
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