方へ向いたところであったが、本能的に船長の叫び声のする方を振り返って、あわててそこへ飛んでゆくと、船長は全身の力をこめて、窓の戸を両手でおさえていたが、ともすると押し返されそうであったので、僕は愛用の例の樫のステッキを取って鍵のなかへ突き通し、あらん限りの力をそそいで窓の戸のあくのを防いだ。しかもこの頑丈なステッキは折れて、僕は長椅子の上に倒れた。そうして、再び起きあがった時には、もう窓の戸はあいて、跳ね飛ばされた船長は入り口の扉を背にしながら、真っ蒼な顔をして突っ立っていた。
「あの寝台に何かいる」と、船長は異様な声で叫びながら、眼を皿のように見開いた。「わたしが何者だか見る間、この戸口を守っていてください。奴を逃がしてはならない」
僕は船長の命令をきかずに、下の寝台に飛び乗って、上の寝台に横たわっている得体《えたい》の知れない怪物をつかんだ。
それは何とも言いようのないほどに恐ろしい化け物のようなもの[#「もの」に傍点]で、僕につかまれながら動いているところは、引き延ばされた人間の肉体のようでもあった。しかもその動く力は人間の十倍もあるので、僕は全力をそそいでつかんでいると、そ
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