うです。おや、たしかに今……。私にはあの潮くさい臭いがします。あなたには感じませんか」
船長は自分の鼻を疑うように、しきりに空気を※[#「鼻+嗅のつくり」、第4水準2−94−73]《か》ぎながら、僕にきいた。
「たしかに私にも感じます」
僕はこう答えながら、船室いっぱいに昨夜と同じく、かの腐ったような海水の臭いがだんだんに強くただよって来るのにぞっ[#「ぞっ」に傍点]とした。
「さあ、こんな臭いがして来たからは、たしかにこの部屋が湿気《しけ》ているに違いありません」と、僕は言葉をつづけた。「けさ私が大工と一緒に部屋を調べたときには、何もかもみな乾燥していましたが……。どうも尋常事《ただごと》ではありませんね。おや!」
突然に上の寝台のなかに置いてあった手燭が消えた。それでも幸いに入り口の扉のそばにあった丸い鏡板つきのランプはまだ十分に輝いていた。船は大きく揺れて、上の寝台のカーテンがぱっとひるがえったかと思うと、また元のようになった。素早く僕は起きあがった。船長はあっ[#「あっ」に傍点]とひと声叫びながら飛びあがった。ちょうどその時、僕は手燭をおろして調べようと思って、上の寝台の
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