になっているのを見ておいたのです」と、僕は言った。
船長はまた言った。
「ところが、不思議なことには二度目に行くえ不明になった船客は、この窓から投身したという臆説がわれわれの間に立っているのです。恐ろしい晩でしたよ。しかも真夜中ごろだというのに、風雨《あらし》は起こっていました。すると、窓の一つがあいて、海水が突入しているという急報に接して、わたしは下腹部へ飛んで降りて見ると、もう何もかも浸水している上に、船の動揺のたびごとに海水は滝のように流れ込んでくるので、窓全体の締め釘がゆらぎ出して、とうとうぐらぐらになってしまいました。われわれは窓の戸をしめようとしましたが、なにしろ水の勢いが猛烈なのでどうすることも出来ませんでした。そのとき以来、この部屋は時どきに潮くさい臭いがしますがね。そこで、どうも二度目の船客はこの窓から投身したのではないかと、われわれは想像しているのですが、さてどういうふうにしてこの小さい窓から投身したかは、神様よりほかには知っている者はないのです。あのロバートがよく私に言っていることですが、それからというものは、いくら彼がこの窓を厳重にしめても、やはり自然にあくそ
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