で骨のように乾いていた。僕は出来るだけいっぱいカーテンを引いて、細心の注意を払って隈《くま》なくその中をあらためると、寝床はまったく乾いていた。しかも窓はまたあいているではないか。僕はなんということなしに恐怖の観念に駆《か》られながら窓をしめて、鍵をかけて、その上に僕の頑丈なステッキを真鍮の環の中へ通して、丈夫な金物が曲がるほどにうん[#「うん」に傍点]と捻《ね》じた。それからその手燭の鉤《かぎ》を、自分の寝台の頭のところに垂れている赤い天鵞絨《ビロード》[#「天鵞絨」は底本では「天鷲絨」]へ引っかけておいて、気を鎮めるために寝床の上に坐った。僕はひと晩じゅうこうして坐っていたが、気を落ち着けるどころの騒ぎではなかった。しかし、窓はさすがにもうあかなかった。僕もまた神わざでない限りは、もう二度とあく気づかいはないと信じていた。
ようように夜があけたので、僕はゆうべ起こった出来事を考えながら、ゆっくりと着物を着かえた。非常によい天気であったので、僕は甲板へ出て、いい心持ちで清らかな朝の日光にひたりながら、僕の部屋の腐ったような臭いとはまるで違った、薫りの高い青海原《あおうなばら》のそよ
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