持っておりますから、あなたは私と一緒にそこで寝起きをなさい」
 こうした彼の申しいでには、僕も少なからず驚かされた。どうして船医が急に僕のからだのことを思ってくれるようになったのか、なにぶん想像がつかなかった。なんにしても、この船について彼が話した時の態度はどうも変であった。
「いろいろとご親切にありがとうございますが、もう船室も空気を入れ替えて、湿気も何もなくなってくると思います。しかしあなた、なぜこの船のことなんかかまわないと言われるのですか」と、私は訊いた。
「むろん、私たちは医者という職業の上からいっても、迷信家でないことは、あなたもご承知くださるでしょう。が、海というものは人間を迷信家にしてしまうものです。私はあなたにまで迷信をいだかせたくはありませんし、また恐怖心を起こさせたくもありませんが、もしもあなたが私の忠告をおいれくださるなら、とにかく私の部屋へおいでなさい」
 船医はまた次のように言葉をつけ加えた。
「あなたが、あの百五号船室でお寝《やす》みになっているということを聞いた以上、やがてあなたが海へ落ち込むのを見なければならないでしょうから……。もっとも、これはあなた
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