手の女は期待したより上タマでは有りましたが、私の情《こころ》には既に最前の色情気分《エロティシズム》は消えて階下の疑問の女に注意が惹かれる許りでありました。如何にして歓楽を尽したか、――に就いては記述の中心から離れる事ですし、或いは閣下は、精神病学的見地より私の性欲の詳しい説明を欲せられるかも知れませんが、是は此の場合遠慮して直接口頭にて御答えする事に致しましょう。相手の女は初々しい Spasme《スパズム》 を以て私を攻め立てて来ましたが、一方私は御義理一点張りの Ejaculation《エジャキュレエション》 にてそれに応じる責を果したに過ぎません。其の労働部屋は四畳半で、枕許には桃色《ピンク》のシェエドを被うたスタンド・ランプが仄かな灯を放ち、薄汚ない壁には、わたしゃあなたにホーレン草、どうぞ嫁菜になり蒲公英《たんぽぽ》、云々の戯句《ざれく》が金粉模様の短冊に書かれて貼って有りました。私は外面何気無く粧い其の戯句を繰返し眺め乍ら、今迄|階下《した》に居た眼鏡を懸けた丸髷の女も客をとるのか、と第一の質問を発して見ました。すると女の答えるには、其の眼鏡を懸けたおふささんには、既《も》
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