けたままでいられる御隠居さまが、ぴったりと、障子をたて切り、電灯も消されまして、薄明るい、まくら雪洞《ぼんぼり》にしつらえました、小さなあかりをつけていられるのみでございます。私は、飛び石をつたいながら、はて、不思議なこと、と思わず、立ちどまったことでございました。中には、たしかに御隠居さまがいられます。しかし、障子にうっすらと、さした影から考えますと、おひとりではございませぬ。誰か、も一人の方と、向い合って、じっと、していられるご様子でございます。私は、あまりにも、そのご様子に、常ならぬものを感じたのでございました。はしたないとも、無作法とも、そうしたことを考える余裕もございませぬ。音をたてぬよう、静かに、縁側に上がって、障子を細目にひらき、そっと中をのぞいたのでございます。と、雪洞のうす明るい、真白い光にてらされて、御隠居さまの、無言で、じっと、坐っていられる姿が見えたのでございます。前には、どなたが、……こう考えまして、ひとみをこらしました時、私は、われにもあらず、
「あっ……」
と、声を上げたのでごさいます。私の目にうつりました人影、それこそ、誰の姿でもございません。私ではご
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