ので、私も、その時には、何の気にもいたしませんでした。しかし、師匠が、ああした不可解な死をとげられました今になっては、そうしたことが、何か関係していたのではあるまいか――とも思えるのでございます」

        |○|[#「|○|」は縦中横]

 これで、一、二、三の被疑者が、つまり――
[#ここから1字下げ、折り返して6字下げ]
杵屋新次(私の長唄のお師匠で、何時も被害者岩井半四郎の立三味線を弾いていられる方)
[#ここから1字下げ、折り返して7字下げ]
杵屋新三郎(杵屋新次さまの一のお弟子で急病の新次師匠に替って道成寺の立三味線を弾かれた方)
[#ここから1字下げ、折り返して8字下げ]
名見崎東三郎(被害者岩井半四郎の後見として、道成寺の舞台を勤めていられた方)
[#ここで字下げ終わり]
 ――のお三人の陳述が終ったのでございました。そうした取調べをおうけになりましたのも、
(い)私の師匠、杵屋新次さまの場合では、師匠が開幕前まで持っていられた、象牙の撥が、殺人の現場に残されておりましたため――そして、開幕直前の急病が、疑問の目で見られたため――でございましょうし、
(ろ)杵屋
前へ 次へ
全54ページ中40ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
酒井 嘉七 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング