かに、望んでいた……と。
筆者は、右の事情を前書きすることに依って、この「娘道成寺殺人事件」の紹介を終り、姓名不詳の作者が希望していたであろう通りに、その全文を探偵小説愛好者諸氏の御批判に捧げる。
|○|[#「|○|」は縦中横]
わたくしが、あの興行を、河原崎座《かわらざきざ》へ見物に参りましたのは、もとより、歌舞伎芝居が好きであり、
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瀬川菊之丞《せがわきくのじょう》
芳澤《よしざわ》いろは
嵐雛助《あらしひなすけ》
瀬川吉次《せがわきちじ》
名見崎東三郎《なみざきとうざぶろう》
岩井半四郎《いわいはんしろう》
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と申しますように、ずらりと並んだ、江戸名代役者のお芝居を、のがしたくはなかったからに相違ございませんが、それにいたしましても、中幕《なかまく》狂言の京鹿子娘道成寺――あの地《じ》をなさいました、お師匠の三味線を、舞台にお聞きしたいからでもございました。何分にも、あの興行は序幕が「今様四季三番叟《いまようしきさんばそう》」通称「さらし三番叟」というもので、岩井半四郎《やまとや》が二の宮の役で勤めますのと、
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