佐[#「佐」は底本では「佑」]がこれを保証した。
こうして絶対に盗難の憂をなくするため、ほとんど要塞のように厳重な設備が出来上がったので、大佐はいよいよ邸宅改築の披露を兼ね、自慢のつづれの錦を展観させるべく一夕《いっせき》知己《ちき》を招いた。集まった人々は、大佐の入会しているクラブの会員、婦人、新聞記者、好事家、美術批評家という風に種々雑多な人々であった。
客は門を入るや否や、まるで監獄へでも投げこまれたように思わせられた。階段の下には例の三人の刑事が、仁王立になっていて、するどい眼玉をギロつかせ、いちいち客から招待状を受取り、おまけに迂散《うさん》くさそうにジロジロ顔を見た。ほとんど身体検査をされ、指紋をとられんばかりである。蟻の這入《はい》る隙間もないとはこの事であった。
大佐は二階で客を出迎えて、この仰山な警戒を詫びたり、そして錦の安全を期するためにほとんど万全の策がとられた事を誇ったりした。夫人はさもあきらめ顔に大佐の傍に従っていた。若々しく、美しく、気品があって、房々とした金髪、真白な肌、なよなよとして媚《なま》めかしい中に愁《うれい》を含んだ様子は、まだこのほどの事
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