こんな芝居をやるものですか。それは莫大な利益!』
『だって、利益と云った所で、ルパンが壁布‥‥を亜米利加《アメリカ》とかへ売るというだけのものだろう。それなら‥‥』
『それなら、スパルミエント大佐にだって売れます。こんな芝居をやるがものはありません。』
『じゃア。』
『外にもっと金の這入ることがあるんです。』
『金が這入るというと?』
『そら、課長! スパルミエント大佐は初め一枚盗られた時、大損害だと言って騒いだでしょう。そして今度大佐は死んでも、後に妻君が残っているでしょう。そらその妻君の手に入るじゃありませんか?』
『入るって? 何が!』
『何がって? そら、保険金が!』
 聞くと同時に、ジュズイ氏はあまりの驚きにウウとうなった。初めて事件の真相が彼の面前に展開されたのである。

          七

『や、なるほど、そうだそうだ、大佐は壁布を保険に掛けたな。』
『しかも、少々ではありません。』
『いくらだ?』
『八十万フラン。』
『八十万フラン!』
『そうです、五つの会社へ‥‥』
『夫人はもうそれを請取ってしまったか?』
『昨日十五万フラン、今日は私の居ない間に二十万フラン。
前へ 次へ
全37ページ中28ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
婦人文化研究会 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング