当然なことです。一人で三役勤めているんです。子供にだってこんな問題はわかりますよ。まず屍体はウソだから取除けますよ。』
『ふん!』
『あとにはスパルミエント大佐と、ルパンとの二人が残るでしょう。』
『ふん!』
『それから、他から入っていないし、内の者にも他にはないのですから、スパルミエント大佐こそは‥‥』
『ルパンか?』
『そうです。課長! ブレジリヤの富豪という化の皮を被って、彼奴《きゃつ》は六ヶ月前にスパルミエント大佐と称し、英国を旅行している中あの綴れ錦の壁布の発見されたことを聞いてそれを買い込むと、その中一等良いのを盗まれたと言ってルパンに世人の注意を向け、ルパン対スパルミエントの大芝居で世間の人気を集め、招待会で来客を驚かし、すっかり膳立が出来ると、献立通りの御馳走を頂戴したのです。大佐は死んでしまった。友達からは惜しまれ、世間からは気の毒がられ、そして本体の最終目的たる多大の利益を握るために‥‥』と言いかけて、刑事は課長の顔色をうかがいながら、
『愛妻を残しておいたのです。』
『エジス夫人だね。』
『そうです。』
『君は本当にそう思うか?』
『思いますとも。目的もないのに、
前へ 次へ
全37ページ中27ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
婦人文化研究会 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング