出した。
『全力を上げて研究しました。色々の方法も皆同じ結果に集って来ました。それは私の確信を与えたものです。それは真に驚くべき理知的な方則《ほうそく》です。』
『ふむ!』
『理論から云っても、実際から云っても、この窃盗は邸内に住んでいる共犯者の手を借りなければ行うことは出来ません。しかるに、その共犯者が無いのです。』
『変だね、どうして共犯者が無い?』
『実に変です。しかし、もう一歩進めて考えると同時に、それは恐ろしい真理にぶつかります。』
『えッ?』
『実に捕え所のないほどの真理です。しかし十分の根拠があるんです。課長! お解りになりませんか?』
ジュズイ氏はしばらく沈黙した。そして課長にも主任刑事の胸中と同様の思索が波打って起った。
『来客でもなく、召使でもなく、探偵達でもないとすると?』
『まだ、残っている人がありますよ。』
ジュズイ氏は愕然として身を震わせた。
六[#「六」は底本では「七」]
『だって君、そんな事があるはずはない。』
『なぜです?』
『まア、考えてみたまえ。』
『はい。』
『そんな、そんな馬鹿な事が‥‥』
『どうしてです?』
『考え
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