目に合いましたが、でもそれによって、自然彼との戦の作戦に経験を積んだのです。そこで本件についても、事件を聞くとすぐ思いついたのは、ルパンという奴は、こうすればどうなるという結果を考えないでは、何事もやった事はありません。だから、あの壁布が盗まれれば当然の結果としてスパルミエント氏が自殺するくらいのことを考えないことはありません。しかるに元々彼は人を殺すことは断じてしません。血を見ることをはなはだしく嫌っている彼が、自殺をすることを予期しつつ壁布を盗んだことが第一の疑問です。』
『しかし五六十万フランもする‥‥』
『錦の壁布には代えられないと云われますか?』
『そうだ。』
『いいえ、課長! ルパンはいかなることがあろうとも、物質のために人命を奪うようなことは致しません。もちろん自ら手を下さないばかりでなく、すべての死の原因となることを避けるのは彼の持前です。』
『すると?』
『あの前夜の招待会で、電燈を消したり、電鈴を鳴らしたりしたのは何のためでしょう。これが第二の疑問です。私はこの一行動を以て、恐怖不安、怪異の心を起させ、本件に対して人の嫌疑をくらまそうとする真犯人の策略だと思いますが
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