ったらしくも思うが、いよいよここでその新徴組の話になるのです。まずここは、
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「新徴組」といふ壮士の団体は、徳川の為に諸藩の注意人物を抑へる機関でありました。
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と書き出してある。もともと小説だから、善人を悪人に、悪人を善人に書いたところで、悪いわけはないでしょう。しかし新徴組というものを、こういうものだと思う人があったら、それは大変な間違いで、壮士の団体というのはまあいいが、決して「徳川の為に諸藩の注意人物を抑へる機関」だったのではない。浪士取扱いという名目で、浪人を沢山集めた。これは清川八郎の目論見《もくろみ》で、それが新徴組になったのです。こんな歴史は今改めていうまでもない話であるが、諸藩の注意人物を、どうするこうするというようなものじゃない。
 一一七頁に、新徴組の一人が「隊長」と言って呼んでいる。「隊長と呼ばれたのは水戸の人、芹沢鴨」と書いてありますが、新徴組になってからでも、隊長とはいっていない。続いて、「新徴組の副将で、鬼と云はれた近藤勇」ともあるが、副将という名称もなかった。近藤勇が売り出したのは、京都へ行ってから、会津と提
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