中里介山の『大菩薩峠』
三田村鳶魚

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)婀娜《あだ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)秋月|胤永《たねつぐ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ぞんざい[#「ぞんざい」に傍点]といふのは

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)もし/\
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     上

 中里介山さんの『大菩薩峠』(普及本の第一巻)を読んでみる。これは最初のところは、奥多摩の地理や生活ぶりが書いてあるので、そこに生れた作者にとっては、何の造作もない、まことに危なげのないところでゆける。しかし例の通り言葉遣いや何かの上には、おかしいところがある。それから武家の生活ということになると、やはりどうもおかしいところが出てくる。これは大衆文芸として、早い方のもののようでありますが、怪しい方でも同じく早いということになるんだろうと思う。
 一二頁のところで、宇津木文之丞の妹だといって、この小説の主人公である机竜之助を訪ねて来た女がある。その言葉に「竜之助様にお目通りを願ひたう存じまし
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